あの子

じふ一人で戦う勇者にはなれない。

あまりの苦しさにあの子は泣き崩れました。
何が苦しいのか、何が嫌なのか、何がそんなに辛いのか。
全部全部わからない。言葉にできないのです。
ただ、自分があの場所にいることができない ということだけがわかるのです。
しかし、そんなのはわがままだ、みんなだって毎日しんどいんだ、辛いんだと言われてしまい、
あの子は我慢して、我慢して、自分を傷つける。
「痛くないの?」「痛くないよ。こうやって傷を見る方が安心する。」
「でもそれいけないことだって言ってたよ。悲しむよ。」
「誰がそんなの決めたのさ」
「世間一般?」「その世間一般っていうのはワタシの唯一の逃げ場さえも奪うの?」
「誰かもわからないんだからそんなのどうだっていいじゃない。」
あの子はずっと一人でいるからずっと一人でもう一人の自分とお喋りする。
だってあの子にとって周りの全てが恐怖の対象なんだから。
ある日傷が見つかってしまってああの子はものすごく怒られた。
頭ごなしに怒られた。あの子はきっとこう思ってる。
「助けを求めたときに助けてくらなかったじゃないか。
なぜ今になってこんな傷でそんなに怒るのさ。」
きっと怒ってる。あの子もきっと怒ってる。
みんなきっと戸惑ってる。
でも、それでもずっと耐えたんだから、君はえらいね。ただ、頑張ったねって。
君にそう伝えたい。
それに周りがそんなに過剰に反応してしまったら、あの子は今後誰も信用できなくなっちゃうよ。

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